Itheは2016年に作った初めてのコレクションからこれまで、
”世界各地にある「日常の制服」と呼ばれるべき衣服、プロダクトを採集し、それらを見立てることで極力デザインを加えないまま再現する”
という活動を続けてきました。
そして、昨年からはそれと並行しながら〈イザシャツ〉〈イザコート〉のような、
これまでのモデルを更新したオリジナルプロダクトを半年に1、2型ほど、少しずつ増やし始めています。
たとえばLevi'sの501やM65、Brooks BrothersのジャケットやLACOSTEのポロシャツ、Kamehamehaのハワイアンシャツといったいわゆる名作、名品と呼ばれるものから、
これまで脚光を浴びることのなかった、しかし当時の時代や暮らしを象徴するものでもあったワークウェアやスリーピングウェアからスポーツウェアなど、
”現代の民藝品”とも呼べるようなものたち。
そういった普遍的なデザインを現代のライフスタイルに合った姿で再現することで新たな日常の制服を生み出してきましたが、
それも長く着ていると「もっとこうしたい」という部分や「今だとこうした方が気分に合う」という心境の変化がだんだんと表れてきます。
たとえ同じ服であっても10年前に着ていた服を今では小さく感じたり、少しのシルエットの具合に違和感をもってしまったり、
ディテールにどこか言葉にできない古臭さを感じてしまったりするように、
当時は「これが普遍的だ」と思っていたことも少なくない年月が経てばそれらもあっけなく変わってしまう。
そんな人の移り気とも、きちんと向き合っていくべきだと感じたのです。
だからこそ、ものづくりを継続的に行っていくには常に微調整やアップデートを繰り返していかなければならない。
普遍的であるためには、変化し続けることが必要なのです。
そのために、再現することだけでなく、同時に更新していくことへもItheは取り組むべきだと思いました。
きっと〈イザシャツ〉や〈イザコート〉も、今は納得のいく最高のかたちで作ることができていますが
10年後にはまたその時に普遍的だと感じるかたちに姿が変わっていることでしょう。
そうであるべきだ、とも思います。
これまでの歴史の中で多くの人に袖を通されてきた先人のデザインに敬意を払い、そういった衣服、プロダクトをベースに扱いながら、
それらの服がこれからも普遍的であり続けるために必要であれば手を加え、または省き、丁寧に新しい服として仕立てていきたいと思います。